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書籍のご案内

描画と痕跡
―表面における表現の発生  
西崎実穂著
A5判・上製・144頁
(本体3,500円+税)
ISBN 978-4-8115-7871-2 C1037
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内容概略
 本書は,「表現」という人間特有のふるまいの中でも「視覚表現(depiction)」を,私たちの周囲を取り巻くさまざまな表面で生じる変更として定義し,その意味と価値を心理学者のジェームズ・ギブソン(James. J. Gibson)の生態学的アプローチの観点から明らかにすることを目的としている。生態学的アプローチは,特殊な過程や関係を創造するのではなく,既に環境にある事物に対してその存在と可能性を私たちに気づかせる一つの見方を提供する。それは,環境と行為者を相補的に捉える観点であり,環境に潜在する新たな行為の可能性は行為者によって顕在化されると言うことができる。
 本書では,ギブソンが問題とした生態学的な「情報」,「知覚システム」,「表面」の理論を,それぞれ従来の「視覚」,「身体」,「表現」の概念を再定義する新しいアイデアとして議論に用いた。実証的事例として,(1)高度な描画経験者による観察デッサンを行う描画行為と(2)乳幼児による「痕跡」を残す変更行為を取り上げた。質的・量的分析の結果,表面の変更という個々の発生から包括的な視野に基づく縦断的な表現の発生を明らかにした。環境と身体の二項から表現を検討し,両者の相補性を詳細に観察することで表現の本性や,その発生・発達を具体化できる可能性を示す生態学的表現論を提起した。

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目次

序章
第Ⅰ部 研究の背景
第1章 視知覚の諸理論と視覚表現
 1.視知覚理論の歴史的背景―遠近法と間接知覚
 2.視知覚への生態学的アプローチ―“環境の直接知覚”説
 3.表面と視覚表現―研究の視座と目的
第Ⅱ部 描画の研究
第2章 描画による表現活動
 1.描画制作におけるデッサンの位置づけ
 2.描画における視覚と能動的な身体の動き
 3.描画における身体性――描画動作の構成と制御
第3章 デッサンが成立する過程―姿勢に現れる視覚の役割
 1.研究の背景
 2.目的
 3.方法
 4.結果
 5.考察
第Ⅲ部 痕跡の研究
第4章 乳幼児期の表現活動
 1.描画発達の諸理論と子どもの描画
 2.初期描画における身体性
 3.Gibsonによる描画行為と痕跡――原初的描画行為と原初的造形行為
 4.乳幼児の知覚発達と環境――手と眼の協応
第5章 乳幼児による行為と「痕跡」の分析―――表現以前の“表現”
 1.研究の背景
 2.目的
 3.方法
 4.結果
 5.考察
第Ⅳ部 本研究のまとめ
第6章 総合的考察
 1.結果のまとめ
 2.生態学的アプローチと表現
 3.生態学的アプローチによる表現研究への示唆
 4.今後の課題
 5.おわりに
引用文献
謝辞

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著者

西崎実穂著

西崎 実穂(にしざき みほ)
首都大学東京システムデザイン学部・研究科助教

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