多様化する日本人の異文化経験の中で、本書は高校生の米国留学を扱っている。異文化接触においては話し手のどちらか、もしくは両方が「自分が最も自由に使えることばでない言語」を用いなければならないという現実を捉え、第二言語、特に習得途上の言語を使用する側から異文化間の対人接触や心理を分析する。
　第二言語でコミュニケーションをすることは対人行動レパートリーの拡充を意味する。本研究では社会心理学的な研究法を用い、生徒たちが英語を用いて対人関係を形成する努力の中で、ソーシャル・スキルを発揮することにより、ソーシャル・サポートを得て適応していくことを確認する。さらに、外国語教育学の観点から、このプロセスに英語力がどう関わるかを調査する。また、異文化での対人接触を通して対人行動としての英語運用能力を習得する様子を描いている。
　高校生の異文化体験は教育を目的とした意図的な異文化接触の機会である。教育を意図したものであればその実態や効果のアセスメントが必要であろう。本書は異文化学習としての異文化接触の意義を論じ、学際的な研究の可能性を呈示する。