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基礎造形教育におけるデッサンの目的と意義
―絵画作品の幾何学的実証を通して
蝦名敦子 著
A5判・上製・256頁
(本体7,300円+税)
ISBN 4-8115-6751-X C1037
本書は、西洋のデッサンという概念のみならず、日本が多大な影響を受けてきた東洋画も視野に入れながら、造形教育の基礎としてのデッサンの意義と目的について再検討したものである。第一に、デッサンの訓練や修練を通して、美の本質の一つとして均衡・調和の感覚が養われるという理論的仮説を立て、科学的とくに幾何学的手法を用いることによって、その検証を試みた。西洋、東洋を問わずデッサン力によって裏付けられた画家の絵画作品の中には、美的なものとしての均衡・調和が備わっている事実を、コンピュータを活用することによって証明したのである。第二に、現代のデッサンについての考え方が西洋的な概念のみならず、造形の根源についての覚醒を促した石濤著『画語録』を手がかりとして、根本的に見直された。
今日、造形教育の基礎・基本のさらなる徹底が要請されているにもかかわらず、学校の教育現場においては、習得に時間がかかり、訓練や忍耐を要するデッサンが軽視されやすい傾向にある。本書は、現行学習指導要領を論究の背後に見据えつつ、見て描くという行為の中で何が一体習得されるのか、さらには基礎教育として何が大切なのかについて、筋道を立てて教えてくれる。美術教育界、待望の書である。
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第1章 学校教育における基礎造形の問題点
Ⅰ『平成10年度版学習指導要領』に見る基礎造形の問題
Ⅱ 石濤『画語録』と造形教育の基礎
第2章 石濤「一画」論と現代美術教育の課題
「一画」論について/「一画」論が現代美術教育に及ぼす意味
第3章 石濤画の作品分析を通して
作品分析――実景との比較を通して/ものの見方――視点の問題を通して
第4章 尺度について――「一画の洪規」と黄金比
尺度の適用/石濤画における検証/その他の作品への適用
第5章 「一画」とデッサン
視点をめぐるアカデミズムの問題/自由な視点の獲得/内面的視点の可能性
第6章 デッサンと基礎造形教育
輪郭線と面/「一画」と「皴法」/基礎造形教育のデッサンに果たす「一画」の意義
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蝦名敦子 著
蝦名敦子(えびな あつこ)
東京芸術大学大学院非常勤講師
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