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書籍のご案内

近代日本における人種・民族ステレオタイプと偏見の形成過程
  
坂西友秀 著
A5判・上製・352頁
(本体5,500円+税)
ISBN 4-8115-6911-3 C1036
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内容概略
 日本は四方を海に囲まれ、海外との交流は船を利用するほかなかった。海上交通を利用して、琉球を通じた南方経路の交易や中国・韓国との交流は古くから行われてきた。しかし、日本人と西洋人との関わりは遅く、16世紀にキリスト教の宣教師が日本を訪れたことが直接の契機であった。西洋人との交流は、やっと安土・桃山の時代になって始まったのである。その後、キリスト教が禁止され、日本国内での外国人との接触、交流は極端に制限されることになる。鎖国体制の完成により、外国との接触は長崎に限られ、しかもオランダ以外日本への入港が許されなかった。市井の人々が外国の人に接することは皆無であった。しかし、19世紀になると、日本は欧米を中心にした強国から開国を迫られ、海外との交流を余儀なくされた。押し寄せる西洋文化・文明開化の波、そして「異人種」との急激な接触は、画一的な人種観・態度を生み、白人、黒人、黄色人に対する日本人の人種ステレオタイプを発達させた。
 明治時代には、民族や人種への関心が世界的に強くなった。欧米と対峙せざるを得なかった日本もまた、人種や民族を強く意識し、日本民族の独自性、特長を強調するようになった。近代までに形成された日本人の人種観、民族観が、現在の外国人に対する日本人の人種ステレオタイプと偏見にどのような形で関わり、影響を及ぼしているのか。日本の近代における人種ステレオタイプと偏見が形成される心理・歴史的背景を明らかにすることが本書の目的である。

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目次

はじめに
第1章 西洋人との出会い
 第1節 大航海時代と日本の発見
 第2節 西洋人の日本上陸
 第3節 西洋人の蔑視と憧憬
第2章 拒絶された西洋人
 第1節 中世日本の白人観
 第2節 中世日本の黒人観
 第3節 閉ざされた国の外国人
 第4節 日本人と西洋人の隠された交流
第3章 文明開化と人種・民族意識
 第1節 西洋人に対する民衆の心理
 第2節 白人と黒人の対比を通した「人種」意識
 第3節 脱亜入欧と民族意識の覚醒
 第4節 心理学の輸入と民族・人種研究 
第4章 「人種」・「民族」の心理学研究
 第1節 欧米・アジアと日本の比較研究
 第2節 日本の植民地に関する研究
 第3節 日本の「人種」・「民族」・「国民性」に関する研究
 第4節 優生学と日本人の改良に関する研究
 第5節 日本人の知的能力と遺伝・環境・教育に関する研究
 第6節 欧米・アジア諸国に関する随想・紀行文
第5章 富国強兵と日本民族のアイデンティティ
 第1節 富国強兵と心理学
 第2節 2つの世界大戦と民族意識の定植
第6章 世界大戦と民族心理の研究
 第1節 民族に関する心理学研究
 第2節 研究所・大学における民族研究
第7章 大東亜共栄圏と日本民族
 第1節 大東亜共栄圏と大和民族
 第2節 民族アイデンティティの形成と民族教化
おわりに
引用文献
事項索引
人名索引

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著者

坂西友秀 著

坂西友秀(ばんざい ともひで)
埼玉大学教育学部教授

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