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書籍のご案内

教師の葛藤対処様式に関する研究
  
安藤知子 著
A5判・上製・256頁
(本体4,600円+税)
ISBN 4-8115-6941-5 C1037
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内容概略
 本書は、教師に特有な葛藤対処様式について、その様相と特質の解明を試みたものである。教師の行為をめぐる批判的な議論は数多いが、それらはおしなべて、教師の行為を背後で規定している葛藤の存在に十分には着目していない。そこで本書では、まず教師の葛藤に着目してそれを構造的な観点から究明し、次に教師自身による葛藤への主体的対処の様相を具体的場面に即して分析した。
 近年の教員資格制度をめぐる改革は、教員評価制度や褒賞制度の導入、10年経験者研修の制度化、そして教員免許更新制の再論といった形で進行している。教員個々人の力量や資質を問題として、それが改善向上するよう期待し、働きかける方向がいっそう強化される傾向にある。この状況のなかで、あえて教師の行為を「教職という職業の、学校という組織的環境の中での、主体的な行為現象」として理解する視点や、そこから導かれる葛藤対処様式に関する知見は、個人に力点を置く現在の数々の教員政策に対して視野の拡大を促し、環境改善への取り組みの重要性と、その当事者としての学校の在り方へ目を向けるための議論を喚起するものである。

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目次

序章 本研究の目的と方法
 1.問題の所在と研究の目的
 2.先行研究の検討
 3.本研究の方法
 4.本論文の構成
第1章 構造的側面からの葛藤分析の可能性
 1.役割概念の基本枠組み
 2.社会学的アンビバランスの理論
 3.社会学的アンビバランス概念の意義と適用可能性
第2章 教師を取りまく社会学的アンビバランス
 1.教職のアンビバランス・リスト抽出の視点
 2.メディアを介して教師へ向けられる規範的期待
 3.教育委員会が教師に寄せる規範的期待
 4.教職の社会学的アンビバランス・リスト
第3章 葛藤への主体的対処を分析する枠組み
 1.役割葛藤研究の2つのアプローチへの分岐
 2.シンボリック相互作用論的役割研究の視点
 3.行為の取捨選択を決定する妥当性の根拠
 4.<説明>構築としての葛藤調整過程
第4章 学校事故判例における教師の主張―教師自身による<説明>の分析1
 1.学校事故判例への着目
 2.学校事故判例の中の教師
第5章 実践記録の記述における教師の価値選択―教師自身による<説明>の分析2
 1.実践記録に表現される生徒指導場面での行為
 2.葛藤が意識されている場面についての記述
 3.選択した行為の自己評価とその根拠の説明
 4.相反する規範を両立させる行為の説明
第6章 教師の葛藤対処様式としてのアイデンティティ分離
 1.「指導性」の発揮をめぐるアンビバランスへの対処
 2.葛藤対処様式の特質
 3.教師アイデンティティ分離の意義と着目の重要性
終章 本研究の結論と今後の研究課題
 1.本研究から得られた知見
 2.今後の研究課題
引用・参考文献一覧
あとがき

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著者

安藤知子 著

安藤知子(あんどう ともこ)
上越教育大学学校教育学部助教授

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