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書籍のご案内

イノベーションと産業組織
―企業間コーディネーションの視点  
田中悟 著
A5判・上製・232頁
(本体4,500円+税)
ISBN 4-8115-7041-3  C1033
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内容概略
 近年、イノベーションをめぐって研究開発活動・ライセンシング・標準の策定・M&A活動といった様々な経済行動が生じており、これらの活動が産業組織に与える影響は極めて大きくなっている。こうした重要性にもかかわらず、イノベーションをめぐるこの種の多様な経済活動を経済学的な見地から解明した書物は極めて少ないのが現状である。
 本書では、これらの経済活動をイノベーションを支える技術知識をコーディネートする企業間システムととらえ、この種のシステムがどのような効果を持つかを吟味することによって、イノベーションと産業組織との関連性を理論的・実証的な観点から検討している。とりわけ、技術知識が持つ特異な性質に焦点を当てながら、イノベーションをめぐる企業行動にはそれぞれ異なる種類の外部効果が発生し、これが技術知識のコーディネーションの経済的意味を左右する重要な要因となることが明らかにされている。加えて、こうした議論に基づいて、あるべき競争政策や知的財産権制度を設計するためには、関連する企業が保有する技術資産の態様に焦点を当てた経済分析が必要不可欠であるとの政策的含意を導き出している。本書は、イノベーションと産業組織をめぐる議論に対して、企業間コーディネーションの視点が極めて重要な意味を持ち、また、こうしたコーディネーションにとって企業が有する技術資産の態様が重要なことを示した点で、類著にない興味深い視点を提供している。

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目次

序文
第1章 技術知識の性質と企業間コーディネーション
 1 はじめに
 2 技術革新をめぐる企業行動
 3 技術知識の性格とその効果
 4 専有可能性とその規定因
 5 企業間コーディネーションの重要性:本書の課題
 6 本書の構成
第2章 模倣・ライセンスと研究開発活動
 1 はじめに
 2 研究開発活動の社会的最適性
 3 市場でのポジションと研究開発インセンティブ
 4 結語
第3章 共同研究開発活動の経済的効果
 1 はじめに
 2 共同研究開発の規模と形態
 3 共同研究開発のモデル
 4 共同研究開発活動の経済的効果
 5 結語
第4章 技術知識の多様性・連関性とイノベーション
 1 はじめに
 2 技術知識の累積性とシステム性
 3 累積的技術革新と最適な特許保護の水準
 4 イノベーションのシステム性と研究開発インセンティブ
 5 結語
 補論
第5章 知的財産権制度とその役割
 1 はじめに
 2 日米の「プロ・パテント政策」
 3 政策ツールとしての特許制度
 4 特許保護範囲拡大政策の意味
 5 結語
第6章 標準形成と知的財産権制度
 1 はじめに
 2 インターフェース標準とネットワーク効果
 3 標準の形成と維持をめぐる企業戦略
 4 DVDをめぐる規格間競争と知的財産権
 5 結語
第7章 IT分野におけるM&A活動
 1 はじめに
 2 ハイテク産業におけるM&A活動の意味
 3 IT分野におけるM&Aの目的と形態
 4 結語
 付表
第8章 IT革新下の企業戦略と競争政策
 1 はじめに
 2 イノベーションの補完的性質と競争政策
 3 事前的コーディネーションと競争政策
参考文献
あとがき
索引

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著者

田中悟 著

田中悟(たなか さとる)
神戸市外国語大学教授

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