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書籍のご案内

環境問題へのアプローチ
―ごみ問題における態度と行動の矛盾に関する正当化メカニズム  
篠木幹子著
A5判・上製・208頁
(本体4,200円+税)
ISBN 978-4-8115-7191-1 C1036
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内容概略
 環境問題に対して高い関心を持ちながらも、実際には環境にやさしい行動を行わない人々が数多く存在する。このように態度と行動の間に矛盾をかかえる人々は、なぜ環境にやさしい行動を実行しないのだろうか。また、どのようなきっかけがあれば、環境にやさしい行動を実行するようになるのだろうか。本書では、社会的ジレンマ状況として捉えられる環境問題の中でもごみ問題を取り上げ、ごみ減量行動の一つであるリサイクル行動に焦点をあてている。そして、態度と行動の間に矛盾がある人々の行動メカニズムを正当化している理論に基づいて検討し、聴き取り調査および調査票調査によって得られたデータを分析することで、この問題を検証している。
 本書における分析の結果、(1)態度と行動の間に矛盾のある行為者は、不安定な矛盾の状況を解消するために正当化を行うことで環境配慮行動の不実行の状態を維持し続ける、(2)正当化の方法にはいくつかの種類があり、多くの人はコストや自分自身の都合を強調することで正当化を行う、(3)矛盾のある行為者は一様ではなく、正当化のタイプによっていくつかの下位類型に分類できると同時に、どの類型に個人が属するかによってリサイクルを促進すると考えられる要因の受け入れ方に違いがみられることなどが明らかになっている。

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目次

第1章 研究の目的と対象
 1.環境問題へのアプローチ
 2.社会的ジレンマと環境問題
 3.本書の課題
 4.焦点をあてる主な環境問題
 5.焦点をあてる環境配慮行動
 6.ごみ問題の社会学的位置づけ
第2章 環境配慮行動に関する先行研究
 1.環境配慮行動に影響を与える要因に関する先行研究
 2.環境配慮行動に関する従来の理論
 3.先行研究の問題点と課題
第3章 仙台市におけるリサイクル行動
 1.仙台市において実行可能なリサイクル行動
 2.仙台市がすすめるリサイクル行動とその問題点
 3.仙台市以外の回収主体がすすめるリサイクル行動
 4.分析に使用するデータの特徴
 5.仙台市民のリサイクル行動の特徴
 6.リサイクル行動に関する分析結果と考察
第4章 リサイクル行動に影響を与える要因間の関連
 1.社会的ジレンマ状況とリサイクル行動に影響を与える要因の関連
 2.各要因とリサイクル行動の関連
 3.構造機会要因と内的要因のリサイクルに対する影響力
 4.リサイクル促進要因と阻害要因の交互作用効果
 5.リサイクル行動に影響を与える要因分析の結果と考察
第5章 環境にやさしい態度と行動の矛盾
 1.態度の定義
 2.態度と行動の関係
 3.態度と行動の因果関係
 4.環境にやさしい態度と行動とが食い違う理由
 5.態度と行動の矛盾の傾向
 6.環境問題に対する関心と環境配慮行動の分析結果と考察
第6章 環境配慮行動の不実行メカニズム
 1.合理的な行為者における環境問題に対する態度と行動の矛盾
 2.正当化に関するDiekmann and Preisendorferの3戦略
 3.正当化戦略の修正
 4.態度に関する斉合性理論との関係
 5.正当化戦略の一般モデル
 6.正当化モデルの実証分析の可能性
第7章 態度と行動の矛盾を抱える不実行者の特徴
 1.正当化戦略の採用傾向
 2.態度と行動の間に矛盾がある不実行者の正当化戦略採用の特徴
 3.外的要因の受容可能性
 4.正当化戦略の採用に関する分析結果と考察
終章 環境問題と環境配慮行動
 1.本書の要旨
 2.本書のアプローチの特徴
 3.不実行者の行動変容の可能性
 4.政策的提言
 5.今後の展開
引用文献

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著者

篠木幹子著

篠木幹子(しのき みきこ)
岩手県立大学総合政策学部講師

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