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書籍のご案内

現象学から探る豊かな授業
  
中田基昭編著
A5判・上製・208頁
(本体3,000円+税)
ISBN 978-4-8115-7521-6 C1037
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内容概略
 本書は、斎藤喜博が島小学校の校長として赴任して以来、彼と彼に師事した武田常夫をはじめとする教師たちの優れた教育実践を、文学の授業に焦点を当て、ハイデガーの詩作についての思索とフッサールの他者論とに基づき解明することを試みている。それ故フッサール現象学や、哲学の領域では神秘主義とみなされがちな『存在と時間』以後のハイデガーの思索が現実の人間の営みを通常ではとらえられず、また言葉で表わすことが困難な次元で明らかにすることに寄与しうることが、教師や子どもの具体的な授業の生き方に即して詳細に考察される。こうした考察により、現象学が本来我々人間の生き方を鋭く描き出していることを具体的に明らかにすることも意図されている。
 当時は、多くの教育研究者らが島小学校の教育実践を参観した。公開研究会では各教室に入りきれないほど多くの教師が全国から参加し、彼らの実践から学ぼうとしてきた。現在においても、その影響力は教育実践と教育研究において、なお衰えることがない。
 本書で考察される授業では、教師の優れた教材解釈と授業の組み立てによって、我々大人でさえ読みとれないほど、教師と共に子どもたちは教材の世界に深く入り込んでいる。それゆえ、彼らの教材解釈は、本書で詳しく引用されるように、これまでとは異なる仕方での文学作品の読み方へと我々を誘ってくれるはずである。

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目次

はしがき
第1章  授業の「荒れ」を問い直す――島小学校の教育実践を導きとして
  はじめに
  第1節  授業の「荒れ」
  第2節  島小学校の授業と筆者の授業
  第3節  秘められた子どもの想いへと迫ること
  おわりに
第2章 授業における教師の子ども理解――フッサールの他者経験論を導きとして
  はじめに
  第1節  子どもをよく見ること
  第2節  子どもの教材解釈における深さの次元
  第3節  教師の子ども理解
  おわりに
第3章 子どもの討論を喚起する武田常夫の国語の授業――ハイデガーの芸術論を導きとして
  はじめに
  第1節  授業の秘密
  第2節  語についてのハイデガーの思索
  第3節  授業の劇的な構成
  第4節  高揚した気分での真剣な討論
  第5節  授業実践の詩作性
  おわりに
第4章 文学の授業における豊かな解釈――ハイデガーの詩作的思索を導きとして
  はじめに
  第1節  ハイデガーにおける存在の思索
  第2節  文学の授業におけるイメージの多義性
  第3節  文学の授業における詩作
  おわりに
第5章 文学の授業における朗読――詩作とロゴスについてのハイデガーの思索を導きとして
  はじめに
  第1節  詩作とロゴス
  第2節  授業におけるホモロゲイン
  おわりに
索引

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著者

中田基昭編著

中田 基昭(なかだ もとあき)
東京大学名誉教授

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