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書籍のご案内

被虐待児の知能アセスメント
―科学的根拠に基づく心理診断を目指して  
緒方康介著
A5判・上製・横組・148頁
(本体4,000円+税)
ISBN 978-4-8115-7751-7 C1011
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内容概略
 本邦における児童虐待は増加の一途を辿っており、虐待死に係るマスコミ報道も跡を絶たない。平成以降の20年余りで、児童相談所の対応件数は50倍以上に膨れ上がった。家庭での安全・安心が保障されないため、子どもたちは児童福祉施設での生活を余儀なくされる。ところが虐待家庭から分離し、安全な生活さえ保障すれば被虐待児への支援が終了するわけではない。施設入所後、様々な問題を起こし、施設内不適応、学校不適応となる子どもたちは多い。本書では、生命の安全が確保された後、被虐待児の適応をどのように図るかを問題関心にしている。
 虐待被害を受けた子どもたちが適応困難となる背景には「知能」の問題が潜在していることも多い。学校で暴れる子どもの学力が低く、勉強ができない背景に知能の低さが隠れていることもある。知能検査は、子どもの知的能力を測定し、学力を推定し、適応を図るために必要な支援を検討する上で有効なツールである。
 本書の目的は児童相談所の児童心理司が担う心理診断において、参照可能な科学的根拠を提供することにある。被虐待児への知能アセスメントに係る実証的な調査研究に基づき、知能水準、知能特性、知能因子などの実態把握に加え、施設入所による効果、潜在能力の推定など、実践上の支援に資する応用的な知見も提供される。

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目次

はじめに
一部 児童虐待に対する児童相談所と児童心理司の役割
1章 日本における児童虐待の現状
 1)児童虐待の現状と定義
 2)被虐待児への知能アセスメント
2章 児童相談所の機能と児童心理司の職務
 1)児童相談所の機能
 2)診断と保護
 3)虐待対応
 4)児童心理司の職務
 一部の要約
二部 児童虐待と被虐待児の知的発達に関連する先行研究
3章 被虐待児の知能に関する研究史
 1)1960~1970年代
 2)1980年代
 3)1990年代
 4)2000年代以降
4章 先行研究のメタ分析
5章 生理的基盤
 1)海馬
 2)扁桃体
 3)脳梁
 4)小脳虫部
 5)大脳皮質
 二部の要約
三部 被虐待児の知能水準に関する実証研究
6章 日本における実証的研究
7章 施設入所の臨床的効果
8章 潜在能力推定の試み
 三部の要約
四部 被虐待児の知能特性に関する実証研究
9章 被虐待児の知能と学力の乖離
10章 被虐待児の知能構造
 1)被虐待児の知能因子構造
 2)非行児童の知能因子構造
11章 虐待種別ごとの知能プロフィール
 1)身体的虐待被害児の知能プロフィール
 2)性的虐待被害児の知能プロフィール
 3)心理的虐待被害児の知能プロフィール
 4)ネグレクト被害児の知能プロフィール
 5)非行児童の知能プロフィール
 四部の要約
五部 総合的考察
12章 臨床的示唆
 1)児童心理司の専門性
 2)研究知見の活用可能性
13章 今後の課題
14章 結論
引用文献
副論文
あとがき

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著者

緒方康介著

緒方康介(おがた こうすけ)
児童心理司

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