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書籍のご案内

ファミリー・バイオレンスと地域社会
―臨床社会学の視点から  
井上眞理子著
A5判・上製・横組・176頁
(本体4,000円+税)
ISBN 978-4-8115-7981-8 C1011
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内容概略
 家族は「安らぎ」と「癒し」の場所と言われるが、本当にそうだろうか?
 家族は「プライバシー保護」の名のもとに外界から遮断され、家族独特のルールで支配されている(「これがうちの家のしつけの方針だ!」)。こどもにとって親子関係は宿命的で逃れることができない。特に乳幼児にとっては、保護者のケアにその全生命を委ねるので、家族は「安らぎといのちの場」であるが、ケアされなければ直ちに「恐怖と死の場」へ転化する。
 このような「家族」の中で発生する暴力、「ファミリー・バイオレンス」が本書のテーマであり、特に「児童虐待」と「少年による家庭内暴力」に焦点を絞って現状とその国際比較、発生のメカニズム、そして支援と解決の方途を探っていく。
 発生のメカニズムは、「入れ子型エコロジカルモデル」を用いて分析される。「入れ子型エコロジカルモデル」によって、ファミリー・バイオレンスの発生に社会全体の文化・価値観/社会・経済構造的要因/家族内相互作用/個人的要因、がどのように作用しているか、また、それらがお互いにどのように影響し合っているかが明らかにされていく。
 そして、著者が13年間、5回にわたって実施した調査結果に基づき地域社会をベースにした支援と解決の方途を探る。孤立しがちで、日常的に身近な支援を必要とする子どもたち、高齢者等のためにこそ「強いコミュニティ」の創生が必要なのではないか。

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目次

第1章 家族と暴力:ファミリー・バイオレンスとは何だろうか?
 1.「暴力」と「権力」
 2.「ファミリー・バイオレンス」を定義する
 3. ファミリー・バイオレンスの現状
 4. 外国におけるファミリー・バイオレンス:児童虐待を中心に
第2章 ファミリー・バイオレンス発生のメカニズム
 1. リスク要因論
 2. 家族システム論
 3. 入れ子型エコロジカル理論(Nested Ecological Theory)
第3章 家族システムの複雑な様相とファミリー・バイオレンス
 1. プロセスの中の配偶者暴力
 2. ポジティヴ・フィードバックとネガティヴ・フィードバック
 3. 家族はメンバー間の相互作用がコミュニケーション、情報交換によって成り立っている社会システム
第4章 家族維持から家族介入へ:日本における児童虐待への対応を例にとって
 1. 法的対応の変化
 2. アメリカにおける児童虐待への対応の変化:家族維持から家族介入へ
 3. 家族介入的方法としての子の施設入所とその問題点:平成20年調査に基づいて
第5章 地域社会を基盤とした児童虐待への取組
 1. 地域社会を基盤とする虐待への取組についての二つの議論:アメリカの場合
 2.「児童虐待への政策的対応についての調査」:平成17年、24年調査の結果と分析
第6章 少年による家庭内暴力発生のダイナミクスと有効な支援
 1. 入れ子型エコロジカル理論から見た少年による家庭内暴力
 2.「少年による家庭内暴力調査」平成22-23年、平成28年調査の結果と分析
第7章 ファミリー・バイオレンスの臨床社会学
 1. 臨床社会学とは何か
 2. 臨床社会学の方法論的特性とファミリー・バイオレンス研究への応用
文献一覧
調査票
あとがき

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著者

井上眞理子著

井上眞理子(いのうえ まりこ)
奈良学園大学教授

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