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書籍のご案内

深く豊かな人間探究をめざして
―経験科学からみた現象学  
中田基昭 著
A5判・上製・横組・168頁
(本体3,000円+税)
ISBN 978-4-8115-8011-1 C1037
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内容概略
 本書は、教育や保育の現場において日常的に営まれている現実的で具体的な子どもの在り方や意識を現象学に依拠しながら解明することにより、経験科学の視点から哲学としての現象学の問題点を解消し、深く豊かな人間探究を展開することを課題としている。こうした課題を遂行することは、従来は、哲学としての現象学の応用とみなされてきた。しかし、現象学の方法論を遵守しながらも経験科学として現実の人間の根源的な在り方を探究することは、人間の生の奥深い次元で感受性を豊かに育むことにもなる。
 こうした観点から、本書では、現実に生きられている人間は、矛盾したり相反していることを同時にそなえているという意味で、両義的な在り方をしていることをまず明らかにしている。そのうえで、両義的な在り方をしている現実的で具体的な個々の人間を深く豊かに探究することは、一般性を目指す哲学としての現象学とは異なり、研究者自身とは異なる個別的な一人ひとりの他者の在り方や意識を解明することを課題としている経験科学としての事例研究によって可能となることを示す。そして、事例研究の理論化を目指す本書は、独創的であるがゆえに本来は個別的な思索でしかない現象学をより豊かな次元へと普遍化しうることを、現実の乳幼児の意識や在り方から解明している。この結果、乳幼児とは人間の生の探究の際の根拠が凝縮されている存在者であることを導きだしている。

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目次

はじめに
第1章 現象学に基づく質的研究の意味と意義
  1. 質的研究に対する恣意性の要求
  2. 現象学に基づく質的研究のためのスキル
  3. 質的研究における曖昧さ
  4. 質的研究における実感
  5. 質的研究における曖昧さの甘受と柔軟性
第2章 人間における主観と客観との両義性
  1. 主観と客観との両義性の根拠としての世界化の逆説
  2. メルロ-ポンティにおける身体の両義性
  3. 触れる者としての身体と触れられうる物としての身体
第3章 他者経験の現象学から他者の他者経験の解明へ
  1. 現象学を自ら遂行すること
  2. 隠された根拠の解明
  3. 現象学における暗黙の前提
  4. 他者経験の現象学
  5. 他者における他者経験の解明
  6. 共同の受容作用
第4章 人間研究における生の深さとその感受
  1. 生における深さの次元
  2. 実存としての私の存在と不安
  3. 生を感受すること
  4. 自己触発
第5章 現象学的精神病理学からみた現象学
  1. 現象学的人間学の創始者としてのビンスワンガー
  2. ボスによるビンスワンガー批判
  3. 木村敏における現象学的精神病理学
  4. 他者の道筋を自分の道筋にすること
  5. 個別における普遍的な本質
  6. 哲学としての現象学と経験科学との循環関係
第6章 事例研究による哲学の普遍化
  1. 根源や源泉に導かれている独創性
  2. 独創的であるがゆえの個別性
  3. 哲学における個別性の普遍化
第7章 経験科学からみた相互主観性の現象学
  1. 相互主観性の現象学における自他の共存と融合
  2. ワロンにおける癒合的社会性
  3. 新生児の感受性の豊かさ
  4. おぎない合う呼応
  5. 他者経験の根拠としての乳幼児の潜在的能力
おわりに 経験科学による哲学としての現象学の捉え直し
注 
引用文献
索引

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著者

中田基昭 著

中田基昭(なかだ もとあき)
東京大学名誉教授

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